将来、何になりたいですか? キャリアコンサルタントとして伝えたいこと
2021/05/14
中学三年の進路選択の時、私にはなりたいものがありませんでした。
父は自営業で、職種的に女子がそれを継ぐという選択肢はなかったし、母は近くの精密工場で働いましたから、それも自分には合わないだろうな、と思っていました。
当時の担任が、私に向かって「教師に向いてるから、教師になれ」と言って普通科を薦められ、言われるままに普通高校を受験しました。
正直、私はこの担任があまり好きではありませんでした。
結構なお年の上に、小柄で細く、見た目が貧相なことを気にしているのか、教室の中ではいつも竹刀を持っていて、でもそれで生徒を叩いているところは見たことがなかったのです。
つまり、脅しというか、自分を強く見せるための道具。
そんなことをしなければ、生徒に向き合えないのか、と思っていました。
それまで私は一度も、教師になりたい、と思ったことはありませんでした。
小学校の恩師は、今でも尊敬する人生の先輩ですが、自分がその役になりたいと思ったことはなかったし、多くの子どもたちを導く、というその仕事の大変さ、そのやりがいは、何となく感じるが、自分事ではありませんでした。
ただ、他に思いつかなかったから、その選択をしたに過ぎず、この先、どこかで、何かが見つかるだろう、くらいしか中三の私は思っていなかったのです。
結果として、教師にはならなかった訳ですが、講師にはなれました。
初めて講師として登壇したのは2002年で、内容はNPOの基礎講座。
それ以来、NPOの仕事と、今はキャリアコンサルタントとしても、たびたび壇上に立っています。
しばらくそのことに気づいてはいませんでしたが、数年前のある日、「この仕事だって先生だよね」と気づきました。
そして今では、中学の担任の目は確かだったのかも、と思ったりします。
だから、中学生・高校生には言いたいのです。
「今、なりたいものがあっても、それを叶えようと思い続けなくていい。
なりたいものがなくても、何にも困らない。
ただ、目の前に起こってくることにちゃんと向きあって、自分なりに選択していけばいい」
なりたいものが決まっていない、お子さんをお持ちの親御さんにも伝えたい。
「将来何になりたいの? と安易に聞かないであげて。
今、明確に、なりたいものが決まってなくても、大丈夫。
これだ、というものが見つかるように、純粋な目で周りの大人や先輩を見ること、
今がその時、と思ったら、迷わずチャレンジすること、と励ましてあげて」
キャリアコンサルタントの資格を取得しようと思ったとき、私は社会人歴27年目で、それなりに人生の楽しさも、辛さも味わってきた後でした。
この先もそれは続いていくのだろうけど、だからこそ、向かい合う相談者にいつも伝えています。
「新しい人生は、いつからでも、何歳からでも始められる」と。